顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。
今日のテーマは、債務履行の見込みがない場合の会社分割の効力についてです。
会社分割の時点で、分割会社がすでに債務超過に陥っており、債務の履行の見込みがなかったにもかかわらず、債務の履行の見込みがある旨、理由書に虚偽の記載をした場合に、会社分割が無効になりうるか、という問題が出てきます。
裁判例においては、会社分割を行うには分割後に債務の履行の見込みがあることが必要であり、債務履行の見込みは会社分割時に存することが必要であるとして、新設分割無効の訴えが認容されました。
以下は、その裁判例の判決文の引用です。
「商法三七四条の二第一項三号には、分割会社が本店に備え置くべき書類として「各会社の負担すべき債務の履行の見込みあること及びその理由を記載したる書面」が挙げられているが、同規定は、形式的にかかる書面の作成、備え置き義務を定めているにとどまらず、分割会社が負っていた債務を分割計画書の記載に従って新設会社が承継する場合においても、分割会社が同債務を負う場合においても、その履行の見込みがない限り、会社分割を行うことができないことを定めているものと解される。」
続いて以下のとおり判示しました。
「そして、同規定の趣旨が会社債権者の保護にあることからすると、この債務履行の見込みは、分割計画書の作成時点、分割計画書の本店備え置き時点、分割計画書の承認のための株主総会の各時点だけ存すればよいのではなく、会社分割時においてこれが存することを要するものと解するのが相当である。また、債務の履行の見込みは、各会社が負担する個々の債務につき、その弁済期における支払について存在することを要すると解される。 」
会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、御社の顧問弁護士にご相談ください。 法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い残業代の問題、サービス残業の問題などの労務問題は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
2009年12月29日火曜日
2009年11月25日水曜日
顧問弁護士(法律顧問)が日々接するテーマ:支払督促
このブログでは、企業の顧問弁護士をしている者の立場から、日々接している法律問題のうち、一般的な情報として役に立ちそうなものをメモしています。ジャンルは幅広く扱っていますが、近時、未払いの残業代の問題などの労務問題が増えているので、そのような傾向を反映した形でのテーマのバラつきはあるかもしれません。
今回のテーマは、支払督促についてです。
貸金や売買代金などを支払わない相手について、裁判所を利用する方法としては、訴訟を提起する他に「支払督促」という方法があります。ここに、支払督促とは、相手方の居住地を管轄する簡易裁判所に、一定の金額を支払えという裁判所からの督促を申立てるものです。印紙は訴訟の半額、訴訟になれば残りの半額を追徴します。少額訴訟のような請求金額の制限はありません。
裁判所書記官から支払督促状が送られてくれば、通常、債務者は動揺するものです。内容証明郵便を送っても動じなかった債務者に対して多大な心理的プレッシャーを与えることができ、支払いに応じさせる可能性を高めることができます。
支払督促の手続が始まると、裁判所は、請求に理由があるかどうかについては判断しないまま支払督促を発します。そして、送達があってから2週間以内に債務者が異議を申立てなければ、仮執行の宣言が付されて強制執行することができますし、仮執行宣言付の支払督促の送達があってから2週間以内に異議を申立てなければ確定します。つまり、申立人は強制執行(差押え等)の手続に入ることができるのです。債務者が強制執行を止めさせるためには、裁判所に執行停止の申立てをして、保証金を供託した上で、執行停止の決定を得る必要があります。
なお、理由について判断をしていないので、仮執行宣言がない支払督促は無条件に失効して通常の訴訟に移行し、仮執行宣言が付された支払督促は仮執行の宣言ができますが、理由のあるなしは訴訟の手続において判断されます。
通常の訴訟(裁判)とは異なり、申立人(債権者)の申立書を受理した裁判所は、書面審査のみを行い、申立書に問題がなければ債務者(相手方)に支払督促を送ってくれますので、申立人が裁判所に出頭しなくて済みます。
理由のない支払督促がきたら、すぐに異議を述べなければなりません。
なお、訴訟に移行すれば、140万円を超える場合なら当該簡易裁判所を管轄する地方裁判所、140万円以下なら当該簡易裁判所での訴訟となります。
支払督促のデメリットは、金銭の支払請求などにしか利用できませんことです。また、債務者(相手方)の住所を管轄する簡易裁判所に申立てする必要があります(ただし、申立ては郵送でも可能)。債務者が異議を申立てた場合には通常訴訟(裁判)へ移行しますので、債務者の住所地で裁判が行われることになり、そこまで行く必要があります。さらに、公示送達ができないので、債務者の住所が不明の場合にはこの制度は使えません。
支払督促に向くケースとしては、①債務者との間で債務の存在や金額に争いはないが、なかなか支払ってくれない場合、②債務者が裁判までする覚悟はなさそうな場合、③申立人に契約書などの明確な証拠があるなど、勝算が高い場合
逆に支払督促に向かないケースとしては、①債務者(相手方)がお金を借りた覚えはないとか、金額が違うとか言っているような場合は、債務者が異議申立を行う可能性が高いため、支払督促手続よりも直接訴訟をした方がよい場合もあります。また、②60万円以下の金銭の支払を求める場合は、1回の期日で審理を終え判決が言い渡される少額訴訟も検討するとよいです。
ご不明な点は、御社の顧問弁護士にご相談ください。 また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。 なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(会社から残業代が支払われない問題など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
今回のテーマは、支払督促についてです。
貸金や売買代金などを支払わない相手について、裁判所を利用する方法としては、訴訟を提起する他に「支払督促」という方法があります。ここに、支払督促とは、相手方の居住地を管轄する簡易裁判所に、一定の金額を支払えという裁判所からの督促を申立てるものです。印紙は訴訟の半額、訴訟になれば残りの半額を追徴します。少額訴訟のような請求金額の制限はありません。
裁判所書記官から支払督促状が送られてくれば、通常、債務者は動揺するものです。内容証明郵便を送っても動じなかった債務者に対して多大な心理的プレッシャーを与えることができ、支払いに応じさせる可能性を高めることができます。
支払督促の手続が始まると、裁判所は、請求に理由があるかどうかについては判断しないまま支払督促を発します。そして、送達があってから2週間以内に債務者が異議を申立てなければ、仮執行の宣言が付されて強制執行することができますし、仮執行宣言付の支払督促の送達があってから2週間以内に異議を申立てなければ確定します。つまり、申立人は強制執行(差押え等)の手続に入ることができるのです。債務者が強制執行を止めさせるためには、裁判所に執行停止の申立てをして、保証金を供託した上で、執行停止の決定を得る必要があります。
なお、理由について判断をしていないので、仮執行宣言がない支払督促は無条件に失効して通常の訴訟に移行し、仮執行宣言が付された支払督促は仮執行の宣言ができますが、理由のあるなしは訴訟の手続において判断されます。
通常の訴訟(裁判)とは異なり、申立人(債権者)の申立書を受理した裁判所は、書面審査のみを行い、申立書に問題がなければ債務者(相手方)に支払督促を送ってくれますので、申立人が裁判所に出頭しなくて済みます。
理由のない支払督促がきたら、すぐに異議を述べなければなりません。
なお、訴訟に移行すれば、140万円を超える場合なら当該簡易裁判所を管轄する地方裁判所、140万円以下なら当該簡易裁判所での訴訟となります。
支払督促のデメリットは、金銭の支払請求などにしか利用できませんことです。また、債務者(相手方)の住所を管轄する簡易裁判所に申立てする必要があります(ただし、申立ては郵送でも可能)。債務者が異議を申立てた場合には通常訴訟(裁判)へ移行しますので、債務者の住所地で裁判が行われることになり、そこまで行く必要があります。さらに、公示送達ができないので、債務者の住所が不明の場合にはこの制度は使えません。
支払督促に向くケースとしては、①債務者との間で債務の存在や金額に争いはないが、なかなか支払ってくれない場合、②債務者が裁判までする覚悟はなさそうな場合、③申立人に契約書などの明確な証拠があるなど、勝算が高い場合
逆に支払督促に向かないケースとしては、①債務者(相手方)がお金を借りた覚えはないとか、金額が違うとか言っているような場合は、債務者が異議申立を行う可能性が高いため、支払督促手続よりも直接訴訟をした方がよい場合もあります。また、②60万円以下の金銭の支払を求める場合は、1回の期日で審理を終え判決が言い渡される少額訴訟も検討するとよいです。
ご不明な点は、御社の顧問弁護士にご相談ください。 また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。 なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(会社から残業代が支払われない問題など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
2009年7月22日水曜日
サービス残業(残業代請求)
今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
4 争点3について
(1)被告は、原告に対し、原告の意思に基づいて上記主張に係る休日の振替を行ったもので、同振替に係る休日が労働日になるため、休日手当を支払う義務がない旨主張する。確かに、上記認定したとおり被告の従業員就業規則には、休日の振替について「社員は休日を上長の許可を得て変更することができる。又、休日が取得できなかった場合、3ケ月繰り越すことができる。」と規定され、また、本件裁量労働協定で「裁量労働に従事する社員は所属長の命令又は承認を得ずに休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなってはならない。」と規定されている。ところで、被告においては上記認定したとおりの特定の日をもって休日とし、被告の従業員も同特定の日を休日と認識しているところ、仮に、休日(労働義務のない日)の振替がなされれば、当該休日であった日は所定労働日と同様の取扱いを受けることになることからすると、それが認められるためには〔1〕就業規則に休日の振替に関する定めがなされていること、〔2〕所定休日が到来する前に振り替えるべき日を特定して振替手続が行われること、〔3〕休日振替によっても、4週4日の休日(労基法35条2項)が確保されていることが必要であると解するのが相当である。
(2)そこで、本件であるが、被告が上記第2の3(3)記載のとおり休日を振替た旨の主張は本件全証拠によるも当該休日以前に被告主張のとおりの休日振替がなされたと認めることができず、かえって、弁論の全趣旨によれば、同主張に係る休日について事前に振替がなされていなかったことが認められる。
そうすると、被告の上記主張は理由がない。
(3)したがって、被告は、上記主張する休日部分について、原告に対して休日労働に対する割増賃金(残業代)支払の義務を負うというべきであるところ、原告に対して休日分として割増賃金(残業代)支払義務を負う賃金は以下のとおりである。
ア 平成16年4月(3、4日分) 3万2283円
1377円×1042分(内訳960分(16時間〔時間内〕)+82分(1時間22分〔時間外〕)×1.35÷60=3万2283円
イ 平成16年5月(1ないし4日分、8、9日分、15、16日分) 13万7841円
1377円×4449分(内訳3840分(64時間〔時間内〕)+609分(10時間9分〔時間外〕)×1.35÷60=13万7841円
ウ 上記アとイの合計額 17万0124円
5 争点5について
(1)労基法による賃金(但し、退職手当は除く。)債権は2年間行わない場合には時効によって消滅する(労基法115条)。
(2)被告は、本件訴訟が平成17年12月19日に提起されたため、平成18年2月20日に原告に送達された被告の第1準備書面をもって平成15年9月分から同年11月分までの賃金債権について、時効により消滅した旨の主張をする。
被告が同時効を援用する旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著な事実である。
ところで、原告は、賃金債権の消滅時効の起算日は労働者の退職日とすべきである旨主張して、被告主張に係る上記賃金債権について、本件訴えの提起時には2年の消滅時効期間が経過していない旨主張する。しかし、同法115条の規定は特に制限を設けることなくその消滅時効期間を2年と規定していることからすると、原告の同主張は直ちに採用できない。
そうすると、原告主張に係る平成15年9月分から同年11月分までの賃金債権は時間外、深夜の割増分、休日勤務による割増分も含めて時効により消滅しているといわなければならない。
6 争点6について
(1)原告は、被告が労基法に反し、労働基準監督署への届出をすることなく、違法に、原告に裁量労働制が適用されるとして法定外時間労働を強いてきたことによって精神的苦痛を被ったと主張して、慰謝料60万円の支払を求める。確かに、被告が主張する専門型裁量労働制は原告に適用がないことは上記説示したとおりである。
(2)しかし、上記第3の1(2)(3)で認定したとおり被告は、本社において労働者の過半数の代表者との間で専門型裁量労働制に係る労使協定を締結し、それに対応する労働基準監督署に届出ているうえ、原告との間でもその契約社員としての雇用契約のみならず正社員としての雇用契約においても明示的に専門型裁量労働制に係る雇用契約を締結し、原告もそれを了解していたこと、それに原告に対して専門型裁量労働制が適用されないことで上記のとおり時間外、深夜の割増賃金(残業代)が支払われることからすると、被告が原告に裁量労働制が適用されるとして対応してきたことについて、不法行為とまで認めなければならない程度の違法性はなく、また、同割増賃金(残業代)が支払われることで原告が主張するような慰謝料まで支払わなければならない損害があったとまで認めることもできない。
そうすると、原告の上記主張は理由がない。
7 原告は、時間外労働(残業)などに係る未払の賃金額に相当する付加金の支払いを求めるところ、被告の上記認定説示した専門型裁量労働制に対する対応(本件裁量労働協定の締結、その届出)、原告との間のそれに関する合意、それが原告に適応されないことによる賃金未払の経過、その金額などを踏まえると未払額62万4428円(上記3、4で認定し説示した額の合計額)の50%に相当する31万2214円について、付加金としての支払を命じるのが相当である。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
4 争点3について
(1)被告は、原告に対し、原告の意思に基づいて上記主張に係る休日の振替を行ったもので、同振替に係る休日が労働日になるため、休日手当を支払う義務がない旨主張する。確かに、上記認定したとおり被告の従業員就業規則には、休日の振替について「社員は休日を上長の許可を得て変更することができる。又、休日が取得できなかった場合、3ケ月繰り越すことができる。」と規定され、また、本件裁量労働協定で「裁量労働に従事する社員は所属長の命令又は承認を得ずに休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなってはならない。」と規定されている。ところで、被告においては上記認定したとおりの特定の日をもって休日とし、被告の従業員も同特定の日を休日と認識しているところ、仮に、休日(労働義務のない日)の振替がなされれば、当該休日であった日は所定労働日と同様の取扱いを受けることになることからすると、それが認められるためには〔1〕就業規則に休日の振替に関する定めがなされていること、〔2〕所定休日が到来する前に振り替えるべき日を特定して振替手続が行われること、〔3〕休日振替によっても、4週4日の休日(労基法35条2項)が確保されていることが必要であると解するのが相当である。
(2)そこで、本件であるが、被告が上記第2の3(3)記載のとおり休日を振替た旨の主張は本件全証拠によるも当該休日以前に被告主張のとおりの休日振替がなされたと認めることができず、かえって、弁論の全趣旨によれば、同主張に係る休日について事前に振替がなされていなかったことが認められる。
そうすると、被告の上記主張は理由がない。
(3)したがって、被告は、上記主張する休日部分について、原告に対して休日労働に対する割増賃金(残業代)支払の義務を負うというべきであるところ、原告に対して休日分として割増賃金(残業代)支払義務を負う賃金は以下のとおりである。
ア 平成16年4月(3、4日分) 3万2283円
1377円×1042分(内訳960分(16時間〔時間内〕)+82分(1時間22分〔時間外〕)×1.35÷60=3万2283円
イ 平成16年5月(1ないし4日分、8、9日分、15、16日分) 13万7841円
1377円×4449分(内訳3840分(64時間〔時間内〕)+609分(10時間9分〔時間外〕)×1.35÷60=13万7841円
ウ 上記アとイの合計額 17万0124円
5 争点5について
(1)労基法による賃金(但し、退職手当は除く。)債権は2年間行わない場合には時効によって消滅する(労基法115条)。
(2)被告は、本件訴訟が平成17年12月19日に提起されたため、平成18年2月20日に原告に送達された被告の第1準備書面をもって平成15年9月分から同年11月分までの賃金債権について、時効により消滅した旨の主張をする。
被告が同時効を援用する旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著な事実である。
ところで、原告は、賃金債権の消滅時効の起算日は労働者の退職日とすべきである旨主張して、被告主張に係る上記賃金債権について、本件訴えの提起時には2年の消滅時効期間が経過していない旨主張する。しかし、同法115条の規定は特に制限を設けることなくその消滅時効期間を2年と規定していることからすると、原告の同主張は直ちに採用できない。
そうすると、原告主張に係る平成15年9月分から同年11月分までの賃金債権は時間外、深夜の割増分、休日勤務による割増分も含めて時効により消滅しているといわなければならない。
6 争点6について
(1)原告は、被告が労基法に反し、労働基準監督署への届出をすることなく、違法に、原告に裁量労働制が適用されるとして法定外時間労働を強いてきたことによって精神的苦痛を被ったと主張して、慰謝料60万円の支払を求める。確かに、被告が主張する専門型裁量労働制は原告に適用がないことは上記説示したとおりである。
(2)しかし、上記第3の1(2)(3)で認定したとおり被告は、本社において労働者の過半数の代表者との間で専門型裁量労働制に係る労使協定を締結し、それに対応する労働基準監督署に届出ているうえ、原告との間でもその契約社員としての雇用契約のみならず正社員としての雇用契約においても明示的に専門型裁量労働制に係る雇用契約を締結し、原告もそれを了解していたこと、それに原告に対して専門型裁量労働制が適用されないことで上記のとおり時間外、深夜の割増賃金(残業代)が支払われることからすると、被告が原告に裁量労働制が適用されるとして対応してきたことについて、不法行為とまで認めなければならない程度の違法性はなく、また、同割増賃金(残業代)が支払われることで原告が主張するような慰謝料まで支払わなければならない損害があったとまで認めることもできない。
そうすると、原告の上記主張は理由がない。
7 原告は、時間外労働(残業)などに係る未払の賃金額に相当する付加金の支払いを求めるところ、被告の上記認定説示した専門型裁量労働制に対する対応(本件裁量労働協定の締結、その届出)、原告との間のそれに関する合意、それが原告に適応されないことによる賃金未払の経過、その金額などを踏まえると未払額62万4428円(上記3、4で認定し説示した額の合計額)の50%に相当する31万2214円について、付加金としての支払を命じるのが相当である。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
2009年6月2日火曜日
残業代請求
3 争点2、4について
(1)被告は、原告について、被告に雇用されていた全期間、専門型裁量労働制(労基法38条の3)の適用があった旨主張する。確かに、上記前提事実(1)イで記載したとおり原告の業務は専門型裁量労働制で予定されている対象業務(労基法38条の3)に該当するところ、被告は、原告との雇用契約の中で原告の労働について裁量労働制に係る合意をし、また、被告の契約社員・嘱託規定及び従業員に係る就業規則にも専門型裁量労働制に係る規定が設定されている。そして、被告は、本件裁量労働協定を締結し、それを中央労働基準監督署に届出ている。
(2)ところで、専門型裁量労働制について、労基法38条の3第1項は事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者の同意(協定)を必要とすることで当該専門型裁量労働制の内容の妥当性を担保しているところ、当事者間で定めた専門型裁量労働制に係る合意が効力を有するためには、同協定が要件とされた趣旨からして少なくとも、使用者が当該事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者との間での専門型裁量労働制に係る書面による協定を締結しなければならないと解するのが相当である。また、それを行政官庁に届けなければならない(労基法38条の3第2項、同法38条3項)。
同条項の規定からすると、同適用の単位は事業場毎とされていることは明らかである。そこで、ここでいう事業場とは「工場、事務所、店舗等のように一定の場所において、相関連する組織の基で業として継続的に行われる作業の一体が行われている場」と解するのが相当である。
被告の大阪開発部は、上記第3の1(5)で認定したその組織、場所からすると、被告の本社(本件裁量労働協定及び同協定を届出た労働基準監督署に対応する事業場)とは別個の事業所というべきであるところ、本件裁量労働協定は被告の本社の労働者の過半数の代表者と締結されたもので、また、その届出も本社に対応する中央労働基準監督署に届けられたものであって、大阪開発部を単位として専門型裁量労働制に関する協定された労働協定はなく、また、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届出られたこともない。そうすると、本件裁量労働協定は効力を有しないとするのが相当であって、それに相反する被告の主張は理由がない。
(3)そうすると、原告に対しては裁量労働制の適用がない。したがって、被告は、原告に時間外労働(残業)や休日労働があれば、それに応じた賃金を原告に支払うべき義務を負っているというべきである。
(4)そこで、原告の平成15年9月1日から平成16年6月30日までの労働時間であるが、同年1月1日から同年6月30日までの原告の出退社時間は上記第2の2(2)で記載したとおり別紙「労働時間表」中、同期間に対応する期間に係る記載の出社、退社欄記載のとおりであり、平成15年9月1日から同年12月末日までのそれは証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨により同労働時間表中、同期間に対応する期間に係る記載の出退社時間欄記載のとおりであることが認められ、同認定に反する証拠はない。
同認定した原告の出退社時間に被告の就業規則などで定められている所定労働時間8時間、休憩時間1時間を踏まえると、原告の平成15年9月1日から平成16年6月30日までの実労働時間及び時間外労働(残業)時間、深夜労働(残業)時間は労働時間表の勤務時間欄、時間外欄及び深夜欄記載のとおりであることが推認され、同認定を覆すに足りる証拠はない。
ところで、被告は、原告が深夜労働(残業)の申告承認の手続きをとっていなかったため、同人の深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)支払義務を負っていない旨主張する。しかし、被告は、被告のタイムカードの記載から原告が深夜に労働をしていたことを認識することができ、実際にも原告が上記認定した範囲で深夜労働(残業)をしていたことからすると、上記手続の成否は深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)請求権の成否に影響を与えないものというべきである。そうすると、被告の上記主張は理由がない。
(5)原告の上記認定した時間外、深夜に係る労働時間を踏まえて、原告に支払われるべき時間外、深夜の割増賃金(残業代)額を計算する(但し、平成15年9月分から同年11月分を除く。)。
ア 1時間当たりの労働単価
22万4000円×12月分÷244日(年間所定勤務時間)÷8=1377.049円
イ(ア)平成15年12月分 7万4931円
時間外労働時間(残業時間)43時間32分(2612分)
1377円×2612分×1.25÷60分=7万4931円
(イ)平成16年1月分 8万9591円
時間外労働時間(残業時間)52時間03分(3123分)
1377円×3123分×1.25÷60分=8万9591円
(ウ)平成16年2月分 6万4460円
時間外労働時間(残業時間)37時間27分(2247分)
1377円×2247分×1.25÷60分=6万4460円
(エ)平成16年3月分 7万9837円
時間外労働時間(残業時間)45時間38分(2738分)
1377円×2783分×1.25÷60分=7万9837円
(オ)平成16年4月分(但し、3、4日分を除く) 10万5369円
時間外労働時間(残業時間)61時間13分(3673分)
1377円×3673分×1.25÷60分=10万5369円
(カ)平成16年5月分(1日ないし4日分、8、9日分、15、16日分を除く) 1万5417円
時間外労働(残業時間)時間8時間48分(528分)
1377円×528分×1.25÷60分=1万5417円
(キ)平成16年6月分 2万4699円
時間外労働(残業時間)時間14時間21分(861分)
1377円×861分×1.25÷60分=2万4699円
ウ 上記(ア)ないし(キ)の合計額 45万4304円
(1)被告は、原告について、被告に雇用されていた全期間、専門型裁量労働制(労基法38条の3)の適用があった旨主張する。確かに、上記前提事実(1)イで記載したとおり原告の業務は専門型裁量労働制で予定されている対象業務(労基法38条の3)に該当するところ、被告は、原告との雇用契約の中で原告の労働について裁量労働制に係る合意をし、また、被告の契約社員・嘱託規定及び従業員に係る就業規則にも専門型裁量労働制に係る規定が設定されている。そして、被告は、本件裁量労働協定を締結し、それを中央労働基準監督署に届出ている。
(2)ところで、専門型裁量労働制について、労基法38条の3第1項は事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者の同意(協定)を必要とすることで当該専門型裁量労働制の内容の妥当性を担保しているところ、当事者間で定めた専門型裁量労働制に係る合意が効力を有するためには、同協定が要件とされた趣旨からして少なくとも、使用者が当該事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者との間での専門型裁量労働制に係る書面による協定を締結しなければならないと解するのが相当である。また、それを行政官庁に届けなければならない(労基法38条の3第2項、同法38条3項)。
同条項の規定からすると、同適用の単位は事業場毎とされていることは明らかである。そこで、ここでいう事業場とは「工場、事務所、店舗等のように一定の場所において、相関連する組織の基で業として継続的に行われる作業の一体が行われている場」と解するのが相当である。
被告の大阪開発部は、上記第3の1(5)で認定したその組織、場所からすると、被告の本社(本件裁量労働協定及び同協定を届出た労働基準監督署に対応する事業場)とは別個の事業所というべきであるところ、本件裁量労働協定は被告の本社の労働者の過半数の代表者と締結されたもので、また、その届出も本社に対応する中央労働基準監督署に届けられたものであって、大阪開発部を単位として専門型裁量労働制に関する協定された労働協定はなく、また、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届出られたこともない。そうすると、本件裁量労働協定は効力を有しないとするのが相当であって、それに相反する被告の主張は理由がない。
(3)そうすると、原告に対しては裁量労働制の適用がない。したがって、被告は、原告に時間外労働(残業)や休日労働があれば、それに応じた賃金を原告に支払うべき義務を負っているというべきである。
(4)そこで、原告の平成15年9月1日から平成16年6月30日までの労働時間であるが、同年1月1日から同年6月30日までの原告の出退社時間は上記第2の2(2)で記載したとおり別紙「労働時間表」中、同期間に対応する期間に係る記載の出社、退社欄記載のとおりであり、平成15年9月1日から同年12月末日までのそれは証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨により同労働時間表中、同期間に対応する期間に係る記載の出退社時間欄記載のとおりであることが認められ、同認定に反する証拠はない。
同認定した原告の出退社時間に被告の就業規則などで定められている所定労働時間8時間、休憩時間1時間を踏まえると、原告の平成15年9月1日から平成16年6月30日までの実労働時間及び時間外労働(残業)時間、深夜労働(残業)時間は労働時間表の勤務時間欄、時間外欄及び深夜欄記載のとおりであることが推認され、同認定を覆すに足りる証拠はない。
ところで、被告は、原告が深夜労働(残業)の申告承認の手続きをとっていなかったため、同人の深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)支払義務を負っていない旨主張する。しかし、被告は、被告のタイムカードの記載から原告が深夜に労働をしていたことを認識することができ、実際にも原告が上記認定した範囲で深夜労働(残業)をしていたことからすると、上記手続の成否は深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)請求権の成否に影響を与えないものというべきである。そうすると、被告の上記主張は理由がない。
(5)原告の上記認定した時間外、深夜に係る労働時間を踏まえて、原告に支払われるべき時間外、深夜の割増賃金(残業代)額を計算する(但し、平成15年9月分から同年11月分を除く。)。
ア 1時間当たりの労働単価
22万4000円×12月分÷244日(年間所定勤務時間)÷8=1377.049円
イ(ア)平成15年12月分 7万4931円
時間外労働時間(残業時間)43時間32分(2612分)
1377円×2612分×1.25÷60分=7万4931円
(イ)平成16年1月分 8万9591円
時間外労働時間(残業時間)52時間03分(3123分)
1377円×3123分×1.25÷60分=8万9591円
(ウ)平成16年2月分 6万4460円
時間外労働時間(残業時間)37時間27分(2247分)
1377円×2247分×1.25÷60分=6万4460円
(エ)平成16年3月分 7万9837円
時間外労働時間(残業時間)45時間38分(2738分)
1377円×2783分×1.25÷60分=7万9837円
(オ)平成16年4月分(但し、3、4日分を除く) 10万5369円
時間外労働時間(残業時間)61時間13分(3673分)
1377円×3673分×1.25÷60分=10万5369円
(カ)平成16年5月分(1日ないし4日分、8、9日分、15、16日分を除く) 1万5417円
時間外労働(残業時間)時間8時間48分(528分)
1377円×528分×1.25÷60分=1万5417円
(キ)平成16年6月分 2万4699円
時間外労働(残業時間)時間14時間21分(861分)
1377円×861分×1.25÷60分=2万4699円
ウ 上記(ア)ないし(キ)の合計額 45万4304円
2009年5月30日土曜日
残業代請求
今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
(2)被告は、平成12年6月30日、当時の本社の労働者の過半数を代表する者との間で以下の裁量労働協定(以下「本件裁量労働協定」という。)を結んでいる(〈証拠略〉、弁論の全趣旨)。
ア 適用対象業務
(ア)新製品の研究開発
(イ)情報処理システムの分析・設計
(ウ)新たなデザインの考案
イ 裁量労働の原則
上記適用対象業務に従事する社員については、当該業務の性質上、業務遂行の手段及び時間配分の決定等については、社員本人の裁量に委ねるものとし、その決定に関し、具体的指示を与えない。
ウ 勤務時間の算定
裁量労働に従事する社員の1日の勤務時間については、実勤務時間の長短にかかわらず所定勤務時間(8時間)を勤務したものとみなす。
エ 休日・深夜の扱い
(ア)裁量労働に従事する社員は所属長の命令又は承認を得ずに休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなってはならない。
(イ)所属長の命令又は承認により休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなった場合には給与規程の定めるところにより手当を支給する。
(ウ)裁量労働に従事する社員が休日に勤務した場合は、所定勤務時間を勤務したものとみなす。
(3)被告は、平成12年7月26日、事業所の所在地を「東京都中央区〈以下略〉」とする本件裁量労働協定を中央労働基準監督署に届け出ている(〈証拠略〉)。
(4)被告は、原告が大阪開発部で勤務していた際、同開発部で勤務する従業員の過半数を代表する者との間で合意された裁量労働制(労基法38条の3)に関する協定はなく、また、大阪開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届け出られたことはない。
(5)原告が大阪開発部で勤務していた当時、同開発部には正社員が14名(部長1名、庶務と開発を兼ねるもの1名を含む)、契約社員3名、アルバイト3名いたが、被告の大阪開発部所管の取締役、担当執行役員は東京に常駐し、役員らの指示の下で大阪開発部の業務が行われてきた。
なお、同開発部では小口現金精算以外は行っておらず、給与計算や入退社等の各種手続き等は本社(東京)で行っていた。
(6)原告は、平成15年12月から退職した平成16年7月21日までの間、毎月基本給として22万4000円の、また、平成16年6月に賞与として44万8000円、被告から支給を受けた。
2 争点1について
原告は、平成15年12月からの正社員として雇用契約をした後の賃金が年俸制である旨主張する。しかし、上記前提事実(1)イ(イ)で認定したとおり原告と被告との間の正社員に係る雇用契約で、賃金については月給制(〈証拠略〉)と約束しているところ、その認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、原告の上記主張は理由がなく、原告の上記期間の賃金は毎月22万4000円の月給制であったというべきである。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
(2)被告は、平成12年6月30日、当時の本社の労働者の過半数を代表する者との間で以下の裁量労働協定(以下「本件裁量労働協定」という。)を結んでいる(〈証拠略〉、弁論の全趣旨)。
ア 適用対象業務
(ア)新製品の研究開発
(イ)情報処理システムの分析・設計
(ウ)新たなデザインの考案
イ 裁量労働の原則
上記適用対象業務に従事する社員については、当該業務の性質上、業務遂行の手段及び時間配分の決定等については、社員本人の裁量に委ねるものとし、その決定に関し、具体的指示を与えない。
ウ 勤務時間の算定
裁量労働に従事する社員の1日の勤務時間については、実勤務時間の長短にかかわらず所定勤務時間(8時間)を勤務したものとみなす。
エ 休日・深夜の扱い
(ア)裁量労働に従事する社員は所属長の命令又は承認を得ずに休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなってはならない。
(イ)所属長の命令又は承認により休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなった場合には給与規程の定めるところにより手当を支給する。
(ウ)裁量労働に従事する社員が休日に勤務した場合は、所定勤務時間を勤務したものとみなす。
(3)被告は、平成12年7月26日、事業所の所在地を「東京都中央区〈以下略〉」とする本件裁量労働協定を中央労働基準監督署に届け出ている(〈証拠略〉)。
(4)被告は、原告が大阪開発部で勤務していた際、同開発部で勤務する従業員の過半数を代表する者との間で合意された裁量労働制(労基法38条の3)に関する協定はなく、また、大阪開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届け出られたことはない。
(5)原告が大阪開発部で勤務していた当時、同開発部には正社員が14名(部長1名、庶務と開発を兼ねるもの1名を含む)、契約社員3名、アルバイト3名いたが、被告の大阪開発部所管の取締役、担当執行役員は東京に常駐し、役員らの指示の下で大阪開発部の業務が行われてきた。
なお、同開発部では小口現金精算以外は行っておらず、給与計算や入退社等の各種手続き等は本社(東京)で行っていた。
(6)原告は、平成15年12月から退職した平成16年7月21日までの間、毎月基本給として22万4000円の、また、平成16年6月に賞与として44万8000円、被告から支給を受けた。
2 争点1について
原告は、平成15年12月からの正社員として雇用契約をした後の賃金が年俸制である旨主張する。しかし、上記前提事実(1)イ(イ)で認定したとおり原告と被告との間の正社員に係る雇用契約で、賃金については月給制(〈証拠略〉)と約束しているところ、その認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、原告の上記主張は理由がなく、原告の上記期間の賃金は毎月22万4000円の月給制であったというべきである。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
2009年4月5日日曜日
残業代請求
今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
(6)争点6(不法行為に成否について)
(原告)
ア 被告は、労基法に反し、労働基準監督署への届出をすることなく、違法に、原告に裁量労働制が適用されるとして法定外時間労働を強いてきた。
イ 原告は、被告の上記違法な行為により精神的苦痛を被った。同苦痛を金銭的に評価すると60万円が相当である。
(被告)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 事実認定
前提事実及び証拠(〈証拠略〉)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)ア 原告が被告に契約社員として勤務していた期間における被告の契約社員・嘱託規定には以下の規定がある。
契約社員は次のいずれかの勤務日数、就業時間及び休憩時間で勤務するものとする。
(ア)週5日 8時間勤務 フレックスタイム制 休憩時間1時間
(イ)週5日 裁量労働制(裁量労働該当者に限る)
イ また、原告が正社員として勤務していた期間における被告の従業員就業規則には以下の規定がある(〈証拠略〉)。
(ア)就業時間 1日8時間 1週40時間 休憩時間1時間
始業時刻 午前9時30分
終業時刻 18時30分
(イ)裁量労働制 適用対象業務に携わるもので裁量労働制を選択した社員については、上記就業時間に係る規定にかかわらず、職務遂行の手段及び時間配分の決定等は当該社員の自主裁量に委ね、勤務時間管理を行わず所定の労働時間就業したものと見なす。
(ウ)休日 土・日曜日、国民の祝日(日曜日と重複したときはその翌日)、国民の休日(5月4日)、年始(1月1日~1月3日)、その他被告が必要と認めた日
(エ)休日の振替 社員は休日を上長の許可を得て変更することができる。又、休日が取得できなかった場合、3ケ月繰り越すことができる。
(オ)割増賃金(残業代) 時間外労働(残業)、休日労働又は深夜労働(残業)に対しては、給与規定の定めるところにより割増賃金(残業代)を支払う(但し、裁量労働制を採る社員を除く。)。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉、オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
(6)争点6(不法行為に成否について)
(原告)
ア 被告は、労基法に反し、労働基準監督署への届出をすることなく、違法に、原告に裁量労働制が適用されるとして法定外時間労働を強いてきた。
イ 原告は、被告の上記違法な行為により精神的苦痛を被った。同苦痛を金銭的に評価すると60万円が相当である。
(被告)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 事実認定
前提事実及び証拠(〈証拠略〉)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)ア 原告が被告に契約社員として勤務していた期間における被告の契約社員・嘱託規定には以下の規定がある。
契約社員は次のいずれかの勤務日数、就業時間及び休憩時間で勤務するものとする。
(ア)週5日 8時間勤務 フレックスタイム制 休憩時間1時間
(イ)週5日 裁量労働制(裁量労働該当者に限る)
イ また、原告が正社員として勤務していた期間における被告の従業員就業規則には以下の規定がある(〈証拠略〉)。
(ア)就業時間 1日8時間 1週40時間 休憩時間1時間
始業時刻 午前9時30分
終業時刻 18時30分
(イ)裁量労働制 適用対象業務に携わるもので裁量労働制を選択した社員については、上記就業時間に係る規定にかかわらず、職務遂行の手段及び時間配分の決定等は当該社員の自主裁量に委ね、勤務時間管理を行わず所定の労働時間就業したものと見なす。
(ウ)休日 土・日曜日、国民の祝日(日曜日と重複したときはその翌日)、国民の休日(5月4日)、年始(1月1日~1月3日)、その他被告が必要と認めた日
(エ)休日の振替 社員は休日を上長の許可を得て変更することができる。又、休日が取得できなかった場合、3ケ月繰り越すことができる。
(オ)割増賃金(残業代) 時間外労働(残業)、休日労働又は深夜労働(残業)に対しては、給与規定の定めるところにより割増賃金(残業代)を支払う(但し、裁量労働制を採る社員を除く。)。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉、オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
2009年3月2日月曜日
未払いの残業代請求
今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
(3)争点3(休日労働にかかる賃金について〔休日の振替の成否について〕)
(被告)
ア 被告は、原告に対し、原告の意思に基づいて以下のとおりの休日の振替を行ったもので、事後における振替ではない。
対象日 振替日
(ア)平成16年4月3日(土) 同月9日
(イ)同年4月4日(日) 同年5月6日
(ウ)同年5月1日(土) 同月13日
(エ)同年5月2日(日) 同月19日
(オ)同年5月3日(祝) 同月20日
(カ)同年5月4日(祝) 同月21日
(キ)同年5月8日(土) 同年6月4日
(ク)同年5月9日(日) 同年6月18日
(ケ)同年5月15日(土) 同年6月28日
(コ)同年5月16日(日) 同年6月29日
イ 振替の対象となった対象日は労働日となっているため、同各日については休日労働に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(原告)
ア 被告の上記休日の振替処理はその休日の前ではなく事後になされたものである。当該休日には、就業規則上定められた休日としての性格を変更されないまま労働日として原告は稼働した。
イ そうすると、原告は、被告主張の対象日について、休日労働に係る割増賃金(残業代)支払請求権を有している。
(4)争点4(深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)の成否について)
(原告)
ア 原告は、被告の業務指示の下、深夜労働(残業)をした(〈証拠略〉)。
イ そうすると、原告は、深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)請求権を有している。
(被告)
ア 原告は、深夜労働(残業)の申告承認の手続きをとっていない。
イ そうすると、原告には深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(5)争点5(消滅時効の成否について)
(被告)
ア 原告主張に係る時間外などの賃金債権は2年の消滅時効にかかる。
イ 本件訴訟は平成17年12月19日に提起された。
ウ 被告は、原告に対し、平成18年2月20日に同人に送達された被告の第1準備書面をもって平成15年9月分から同年11月分までの賃金債権について、時効により消滅した旨の意思表示をした。
(原告)
ア 原告の被告に対する本件の時間外などの賃金債権の消滅時効の起算日は労働者の退職日とすべきである。
イ そうすると、原告の賃金債権は、未だ、消滅時効期間が経過していない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
(3)争点3(休日労働にかかる賃金について〔休日の振替の成否について〕)
(被告)
ア 被告は、原告に対し、原告の意思に基づいて以下のとおりの休日の振替を行ったもので、事後における振替ではない。
対象日 振替日
(ア)平成16年4月3日(土) 同月9日
(イ)同年4月4日(日) 同年5月6日
(ウ)同年5月1日(土) 同月13日
(エ)同年5月2日(日) 同月19日
(オ)同年5月3日(祝) 同月20日
(カ)同年5月4日(祝) 同月21日
(キ)同年5月8日(土) 同年6月4日
(ク)同年5月9日(日) 同年6月18日
(ケ)同年5月15日(土) 同年6月28日
(コ)同年5月16日(日) 同年6月29日
イ 振替の対象となった対象日は労働日となっているため、同各日については休日労働に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(原告)
ア 被告の上記休日の振替処理はその休日の前ではなく事後になされたものである。当該休日には、就業規則上定められた休日としての性格を変更されないまま労働日として原告は稼働した。
イ そうすると、原告は、被告主張の対象日について、休日労働に係る割増賃金(残業代)支払請求権を有している。
(4)争点4(深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)の成否について)
(原告)
ア 原告は、被告の業務指示の下、深夜労働(残業)をした(〈証拠略〉)。
イ そうすると、原告は、深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)請求権を有している。
(被告)
ア 原告は、深夜労働(残業)の申告承認の手続きをとっていない。
イ そうすると、原告には深夜労働(残業)に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(5)争点5(消滅時効の成否について)
(被告)
ア 原告主張に係る時間外などの賃金債権は2年の消滅時効にかかる。
イ 本件訴訟は平成17年12月19日に提起された。
ウ 被告は、原告に対し、平成18年2月20日に同人に送達された被告の第1準備書面をもって平成15年9月分から同年11月分までの賃金債権について、時効により消滅した旨の意思表示をした。
(原告)
ア 原告の被告に対する本件の時間外などの賃金債権の消滅時効の起算日は労働者の退職日とすべきである。
イ そうすると、原告の賃金債権は、未だ、消滅時効期間が経過していない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
2009年2月22日日曜日
残業代請求(サービス残業)
今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
イ 振替の対象となった対象日は労働日となったため、同各日については休日労働に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(4)原告は、平成16年7月21日、被告を退社した。
3 争点及び争点に対する当事者の主張
(1)争点1(原告の正社員の期間の賃金の態様〔年俸制か、月給制か〕について)
(原告)
原告の正社員の期間の賃金支払方法は年俸制で、その基本給年俸額は358万4000円である。
なお、その支払方法は、上記358万4000円を16で除した額を毎月25日に支払、その金額の2倍に相当する金額を6月10日、12月10日に支払う取扱いであった。
(被告)
原告の正社員の期間の賃金支払方法は月給制であった。
(2)争点2(原告に対する裁量労働制の適否について)
(被告)
ア 被告の就業規則などには契約社員及び正社員ともに裁量労働制の規定があった(〈証拠略〉)。
イ(ア)被告は、原告との間で、同人に係る契約社員に関する雇用契約(〈証拠略〉)、また、正社員に関する雇用契約(〈証拠略〉)において、専門型裁量労働制(労基法38条の3)に係る合意をした。
(イ)被告は、従業員代表との間で専門型裁量労働制に関する協定を締結し(〈証拠略〉)、同協定について、中央労働基準監督署に届出(〈証拠略〉)をしている。
(ウ)大阪開発部は原告が被告に入社した当時、独立した事業所ではなかった。
ウ そうすると、原告は、被告に雇用されていた全期間について、専門型裁量労働制(労基法38条の3)の適用があった。したがって、原告には時間外労働(残業)に伴う割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
エ ところで、労使協定及びそれの労働基準監督署への届出の有無は当事者間で合意された専門型裁量労働制の私法上の効力には影響しない。
(原告)
ア 専門型裁量労働制が認められるためには、それに係る協定は各事業所毎に書面で締結される必要があり、また、当該事業所に対応する労働基準監督署にそれに係る協定書を届け出る必要がある(労基法38条の2)。
イ しかし、原告が勤務していた大阪開発部は被告の東京の本社とは別の事業所であって、そこでは専門型裁量労働制に係る労使の協定は締結されていないうえ、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定に係る書面も提出されていない。
ウ そうすると、原告には被告主張に係る専門型裁量労働制は適用されない。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
イ 振替の対象となった対象日は労働日となったため、同各日については休日労働に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(4)原告は、平成16年7月21日、被告を退社した。
3 争点及び争点に対する当事者の主張
(1)争点1(原告の正社員の期間の賃金の態様〔年俸制か、月給制か〕について)
(原告)
原告の正社員の期間の賃金支払方法は年俸制で、その基本給年俸額は358万4000円である。
なお、その支払方法は、上記358万4000円を16で除した額を毎月25日に支払、その金額の2倍に相当する金額を6月10日、12月10日に支払う取扱いであった。
(被告)
原告の正社員の期間の賃金支払方法は月給制であった。
(2)争点2(原告に対する裁量労働制の適否について)
(被告)
ア 被告の就業規則などには契約社員及び正社員ともに裁量労働制の規定があった(〈証拠略〉)。
イ(ア)被告は、原告との間で、同人に係る契約社員に関する雇用契約(〈証拠略〉)、また、正社員に関する雇用契約(〈証拠略〉)において、専門型裁量労働制(労基法38条の3)に係る合意をした。
(イ)被告は、従業員代表との間で専門型裁量労働制に関する協定を締結し(〈証拠略〉)、同協定について、中央労働基準監督署に届出(〈証拠略〉)をしている。
(ウ)大阪開発部は原告が被告に入社した当時、独立した事業所ではなかった。
ウ そうすると、原告は、被告に雇用されていた全期間について、専門型裁量労働制(労基法38条の3)の適用があった。したがって、原告には時間外労働(残業)に伴う割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
エ ところで、労使協定及びそれの労働基準監督署への届出の有無は当事者間で合意された専門型裁量労働制の私法上の効力には影響しない。
(原告)
ア 専門型裁量労働制が認められるためには、それに係る協定は各事業所毎に書面で締結される必要があり、また、当該事業所に対応する労働基準監督署にそれに係る協定書を届け出る必要がある(労基法38条の2)。
イ しかし、原告が勤務していた大阪開発部は被告の東京の本社とは別の事業所であって、そこでは専門型裁量労働制に係る労使の協定は締結されていないうえ、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定に係る書面も提出されていない。
ウ そうすると、原告には被告主張に係る専門型裁量労働制は適用されない。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
2009年1月12日月曜日
残業代請求
今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。
第2 事案の概要など
1 事案の概要
本件は、原告が時間外労働(残業)を、また、休日労働をしたとして、それに対応する時間外、休日の割増賃金(残業代)などとして108万6821円及びこれに対する平成16年7月22日(被告を退職した日の翌日)から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6%の割合による遅延損害金とともに同未払賃金(未払い残業代)額に相当する付加金108万6821円並びに不法行為による損害賠償請求権に基づき60万円及びこれに対する平成16年7月22日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。
2 前提事実(但し、文章の末尾に証拠などを掲げた部分は証拠などによって認定した事実、その余は当事者間に争いがない。)
(1)ア 被告は、コンピュター及びその周辺機器、ソフトウエア製品の企画、開発、製造、販売、輸出入及び賃貸などを業務内容とする株式会社である。
イ(ア)原告は、平成15年9月1日、被告との間で以下のとおりの雇用契約を締結した(なお、以下の〔5〕〔6〕は甲11)。
〔1〕態様 契約社員(同日から平成15年11月30日まで)
〔2〕勤務場所 大阪開発部
〔3〕職務内容 コンピューターソフトのプログラミング
〔4〕賃金 27万5000円(毎月末日締めの当月25日払い)
〔5〕勤務時間など 裁量労働制、8時間勤務、休憩時間1時間
〔6〕休日 土・日曜日、国民の祝日、国民の休日(5月4日)、被告の必要と認める日
(イ)原告は、同年12月1日、被告との間で雇用契約(正社員として)を締結した(なお、以下の〔4〕ないし〔6〕は甲12)。
〔1〕勤務場所 大阪開発部
〔2〕職務内容 コンピューターソフトのプログラミング
〔3〕勤務時間など 裁量労働制、8時間勤務
〔4〕休日 年間104日以上とし、1週間の労働時間40時間以内を守りながら原告の裁量で決定する。また、原告は月間出勤管理簿に毎週2回以上の休日予定日を記載し、被告へ提出しなければならない。
〔5〕賃金 基本給、住宅手当、通勤手当(但し、基本給は月給制)(毎月末日締めの当月25日払い)
〔6〕賞与 毎年6月と12月に、原告の過去6カ月間(前年9月~当年3月、あるいは当年4月~当年9月)の勤務成績に応じて、賞与を与えることがある。
(2)原告の平成16年1月1日から同年6月30日までの各日の出退社時間は別紙「労働時間表」〈略〉記載の出社、退社欄記載のとおりである。
(3)ア 原告について、以下のとおりの休日の振替がなされた。
対象日 振替日
(ア)平成16年4月17日(土) 同月21日
(イ)同年4月18日(日) 同月22日
(ウ)同年4月24日(土) 同月28日
(エ)同年4月25日(日) 同月29日
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第2 事案の概要など
1 事案の概要
本件は、原告が時間外労働(残業)を、また、休日労働をしたとして、それに対応する時間外、休日の割増賃金(残業代)などとして108万6821円及びこれに対する平成16年7月22日(被告を退職した日の翌日)から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6%の割合による遅延損害金とともに同未払賃金(未払い残業代)額に相当する付加金108万6821円並びに不法行為による損害賠償請求権に基づき60万円及びこれに対する平成16年7月22日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。
2 前提事実(但し、文章の末尾に証拠などを掲げた部分は証拠などによって認定した事実、その余は当事者間に争いがない。)
(1)ア 被告は、コンピュター及びその周辺機器、ソフトウエア製品の企画、開発、製造、販売、輸出入及び賃貸などを業務内容とする株式会社である。
イ(ア)原告は、平成15年9月1日、被告との間で以下のとおりの雇用契約を締結した(なお、以下の〔5〕〔6〕は甲11)。
〔1〕態様 契約社員(同日から平成15年11月30日まで)
〔2〕勤務場所 大阪開発部
〔3〕職務内容 コンピューターソフトのプログラミング
〔4〕賃金 27万5000円(毎月末日締めの当月25日払い)
〔5〕勤務時間など 裁量労働制、8時間勤務、休憩時間1時間
〔6〕休日 土・日曜日、国民の祝日、国民の休日(5月4日)、被告の必要と認める日
(イ)原告は、同年12月1日、被告との間で雇用契約(正社員として)を締結した(なお、以下の〔4〕ないし〔6〕は甲12)。
〔1〕勤務場所 大阪開発部
〔2〕職務内容 コンピューターソフトのプログラミング
〔3〕勤務時間など 裁量労働制、8時間勤務
〔4〕休日 年間104日以上とし、1週間の労働時間40時間以内を守りながら原告の裁量で決定する。また、原告は月間出勤管理簿に毎週2回以上の休日予定日を記載し、被告へ提出しなければならない。
〔5〕賃金 基本給、住宅手当、通勤手当(但し、基本給は月給制)(毎月末日締めの当月25日払い)
〔6〕賞与 毎年6月と12月に、原告の過去6カ月間(前年9月~当年3月、あるいは当年4月~当年9月)の勤務成績に応じて、賞与を与えることがある。
(2)原告の平成16年1月1日から同年6月30日までの各日の出退社時間は別紙「労働時間表」〈略〉記載の出社、退社欄記載のとおりである。
(3)ア 原告について、以下のとおりの休日の振替がなされた。
対象日 振替日
(ア)平成16年4月17日(土) 同月21日
(イ)同年4月18日(日) 同月22日
(ウ)同年4月24日(土) 同月28日
(エ)同年4月25日(日) 同月29日
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、敷金返却・原状回復義務や借金の返済、刑事事件、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
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