2009年12月29日火曜日

債務履行の見込みがない場合の会社分割の効力

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日のテーマは、債務履行の見込みがない場合の会社分割の効力についてです。

会社分割の時点で、分割会社がすでに債務超過に陥っており、債務の履行の見込みがなかったにもかかわらず、債務の履行の見込みがある旨、理由書に虚偽の記載をした場合に、会社分割が無効になりうるか、という問題が出てきます。

裁判例においては、会社分割を行うには分割後に債務の履行の見込みがあることが必要であり、債務履行の見込みは会社分割時に存することが必要であるとして、新設分割無効の訴えが認容されました。

以下は、その裁判例の判決文の引用です。

「商法三七四条の二第一項三号には、分割会社が本店に備え置くべき書類として「各会社の負担すべき債務の履行の見込みあること及びその理由を記載したる書面」が挙げられているが、同規定は、形式的にかかる書面の作成、備え置き義務を定めているにとどまらず、分割会社が負っていた債務を分割計画書の記載に従って新設会社が承継する場合においても、分割会社が同債務を負う場合においても、その履行の見込みがない限り、会社分割を行うことができないことを定めているものと解される。」
続いて以下のとおり判示しました。
「そして、同規定の趣旨が会社債権者の保護にあることからすると、この債務履行の見込みは、分割計画書の作成時点、分割計画書の本店備え置き時点、分割計画書の承認のための株主総会の各時点だけ存すればよいのではなく、会社分割時においてこれが存することを要するものと解するのが相当である。また、債務の履行の見込みは、各会社が負担する個々の債務につき、その弁済期における支払について存在することを要すると解される。 」

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、御社の顧問弁護士にご相談ください。 法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い残業代の問題、サービス残業の問題などの労務問題は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。