今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
(2)被告は、平成12年6月30日、当時の本社の労働者の過半数を代表する者との間で以下の裁量労働協定(以下「本件裁量労働協定」という。)を結んでいる(〈証拠略〉、弁論の全趣旨)。
ア 適用対象業務
(ア)新製品の研究開発
(イ)情報処理システムの分析・設計
(ウ)新たなデザインの考案
イ 裁量労働の原則
上記適用対象業務に従事する社員については、当該業務の性質上、業務遂行の手段及び時間配分の決定等については、社員本人の裁量に委ねるものとし、その決定に関し、具体的指示を与えない。
ウ 勤務時間の算定
裁量労働に従事する社員の1日の勤務時間については、実勤務時間の長短にかかわらず所定勤務時間(8時間)を勤務したものとみなす。
エ 休日・深夜の扱い
(ア)裁量労働に従事する社員は所属長の命令又は承認を得ずに休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなってはならない。
(イ)所属長の命令又は承認により休日勤務又は深夜労働(残業)をおこなった場合には給与規程の定めるところにより手当を支給する。
(ウ)裁量労働に従事する社員が休日に勤務した場合は、所定勤務時間を勤務したものとみなす。
(3)被告は、平成12年7月26日、事業所の所在地を「東京都中央区〈以下略〉」とする本件裁量労働協定を中央労働基準監督署に届け出ている(〈証拠略〉)。
(4)被告は、原告が大阪開発部で勤務していた際、同開発部で勤務する従業員の過半数を代表する者との間で合意された裁量労働制(労基法38条の3)に関する協定はなく、また、大阪開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届け出られたことはない。
(5)原告が大阪開発部で勤務していた当時、同開発部には正社員が14名(部長1名、庶務と開発を兼ねるもの1名を含む)、契約社員3名、アルバイト3名いたが、被告の大阪開発部所管の取締役、担当執行役員は東京に常駐し、役員らの指示の下で大阪開発部の業務が行われてきた。
なお、同開発部では小口現金精算以外は行っておらず、給与計算や入退社等の各種手続き等は本社(東京)で行っていた。
(6)原告は、平成15年12月から退職した平成16年7月21日までの間、毎月基本給として22万4000円の、また、平成16年6月に賞与として44万8000円、被告から支給を受けた。
2 争点1について
原告は、平成15年12月からの正社員として雇用契約をした後の賃金が年俸制である旨主張する。しかし、上記前提事実(1)イ(イ)で認定したとおり原告と被告との間の正社員に係る雇用契約で、賃金については月給制(〈証拠略〉)と約束しているところ、その認定を覆すに足りる証拠はない。
そうすると、原告の上記主張は理由がなく、原告の上記期間の賃金は毎月22万4000円の月給制であったというべきである。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。