今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
イ 振替の対象となった対象日は労働日となったため、同各日については休日労働に係る割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
(4)原告は、平成16年7月21日、被告を退社した。
3 争点及び争点に対する当事者の主張
(1)争点1(原告の正社員の期間の賃金の態様〔年俸制か、月給制か〕について)
(原告)
原告の正社員の期間の賃金支払方法は年俸制で、その基本給年俸額は358万4000円である。
なお、その支払方法は、上記358万4000円を16で除した額を毎月25日に支払、その金額の2倍に相当する金額を6月10日、12月10日に支払う取扱いであった。
(被告)
原告の正社員の期間の賃金支払方法は月給制であった。
(2)争点2(原告に対する裁量労働制の適否について)
(被告)
ア 被告の就業規則などには契約社員及び正社員ともに裁量労働制の規定があった(〈証拠略〉)。
イ(ア)被告は、原告との間で、同人に係る契約社員に関する雇用契約(〈証拠略〉)、また、正社員に関する雇用契約(〈証拠略〉)において、専門型裁量労働制(労基法38条の3)に係る合意をした。
(イ)被告は、従業員代表との間で専門型裁量労働制に関する協定を締結し(〈証拠略〉)、同協定について、中央労働基準監督署に届出(〈証拠略〉)をしている。
(ウ)大阪開発部は原告が被告に入社した当時、独立した事業所ではなかった。
ウ そうすると、原告は、被告に雇用されていた全期間について、専門型裁量労働制(労基法38条の3)の適用があった。したがって、原告には時間外労働(残業)に伴う割増賃金(残業代)請求権は発生しない。
エ ところで、労使協定及びそれの労働基準監督署への届出の有無は当事者間で合意された専門型裁量労働制の私法上の効力には影響しない。
(原告)
ア 専門型裁量労働制が認められるためには、それに係る協定は各事業所毎に書面で締結される必要があり、また、当該事業所に対応する労働基準監督署にそれに係る協定書を届け出る必要がある(労基法38条の2)。
イ しかし、原告が勤務していた大阪開発部は被告の東京の本社とは別の事業所であって、そこでは専門型裁量労働制に係る労使の協定は締結されていないうえ、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定に係る書面も提出されていない。
ウ そうすると、原告には被告主張に係る専門型裁量労働制は適用されない。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉、解雇、刑事事件や借金の返済、敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)、遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。